八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
小畑地区
 
   (てん)  ()  (まつ)  

  「小畑にも過ぎたるものが二つある。山のお神と天狗松」と昔からいわれるほどの天狗松は,延命(えんめい)()裏山(うらやま)福津(ふくづ)黄柳野(つげの)へ通じる山道を1キロほど登ったところにある。そこは屋根が少し平らになって,大小の岩石が散在(さんざい)し,大岩にはひとつばが大群生しており,それを(かか)えるように,あたりをはらって立つ老巨松がある。樹齢(じゅれい)五百年と言ってもおかしくない風格を備えている。海のたこを(さか)さにして,八本の足が空をはうかのような老幹(ろうかん)には,まだまだ精気(せいき)がただよっている。根元は,大人三人でようやくまわるほどの太さがあり,風雪に()えぬいてきたその勇姿(ゆうし)に思わず賛嘆(さんたん)の声が出るほどである。
 およそ天狗松にまつわるいわれや行事も古来数多くあったろうが,今に伝えられているのは雨乞(あまご)いの行事である。この松の下に()き出るしずくをもらい受け,神や仏に「千度参り」をしたり,「千度垢離(こり)」という(みず)垢離(こり)をして(いの)るというものであった。
 また,神仏(しんぶつ)祈願(きがん)した後,(かね)太鼓(たいこ)(はた)さし物を持ち,行列をつくって山頂に登り,浜名湖方面に向かって雨乞いの祈りを(ささ)げ,鐘や太鼓を乱打し,幟旗(のぼりばた)を振ること1時間あまりにして引きあげることもあった。あるいは,村人全員で,この天狗松付近で大火をたき,天狗を(おこ)らせて雨をよんだということもあったという。