八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
小畑地区
 
   田 植 え 地 蔵  

 小畑の延命寺(えんめいじ)には、子どもくらいの大きさのお地蔵(じぞう)様が、両わきに白童子(どうじ)と紅童子がついてみえる形でおまつりしてあります。むかしは、地蔵堂におまつりしてあったのですが、伊勢湾(いせわん)台風のあったときから本堂の方へうつされたそうです。
 おまつりしてある須弥壇(しゅみだん)の上に一枚の板絵が(がく)がかかっています。見ますと、お地蔵さまが、お寺の前の田んぼで馬をつかって、二人の童子(どうじ)と田植えをしておられるところです。
 それには、こんなお話があるのだそうです。
 むかし、ある年のことでした。延命寺では、田植えが何かわけがあって大変遅れてしまいました。ある晩のことです。本尊(ほんぞん)のお地蔵さまが、夜中にお堂からぬけ出して、おともの白童子と紅童子といっしょに、馬を引き、一夜のうちに田植えをすましてしまわれました。そして、お地蔵さまは(つか)れて、(どろ)のついたかっこうで、あぜの草の上に寝てしまいました。
 朝になって、おつとめをしようとやってきたお(ぼう)さんは、本尊さまがいなくなって、びっくり仰天(ぎょうてん)です。村の人々も,お寺の田んぼはゆうべまで草が生えていたのに、朝になったら、田植えがすんでいるではありませんか。大さわぎになりました。田んぼにねておられるお地蔵さまを助けおこして、お堂に帰っていただき、それからいっそうありがたいお地蔵さまとして、おまつりしたということです。