八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
小畑地区
 
   ()  (どう)  (たき)  

 小畑の(おく)のダムの上で、右道をのぼりつめていくと、杉林の中の不動滝に出る。()には寛延(かんえん)2年巳6月吉日建之とある。
 昔、小畑には、12(けん)ほどの御嶽講(おんたけこう)信者があり、(きゅう)の2月26日には、お不動様のお祭りをした。信者には、寒さもいとわず、はだかで滝にうたれ、水垢離(みずごり)をとり、村中安全、五穀豊穣(ごこくほうじょう)祈願(きがん)した。村人たちもこのお祭りには大勢あつまったので、店がでたり、甘酒(あまざけ)がふるまわれたりして大にぎわいをしたという。甘酒は、信者たちが寒行(かんぎょう)白装束(しろしょうぞく)で、呪文(じゅもん)(とな)えながら各戸をまわって集めたお米でまかなわれた。
 水垢離(みずごり)は、不動尊(ふどうそん)(おが)み、呪文を唱え、九字(くじ)を切っていると、神霊(しんれい)がのりうつり、身体がふるえてくる。ほかの信者が、
「あなた様は何という神様でいられますか。」
と問うと、
「我は不動明王神なり。知りたいことあらば何でも答えん。」
という。そこで稲作、畑作、養蚕(ようさん)のことなど(たず)ねると、おごそかな声で、
「稲作は、水不足の(おそ)れがある。水を大切に、深耕(しんこう)留意(りゅうい)し、(あぜ)水漏(みずも)れに注意せよ。」
と言う。信者の先達(せんだつ)が、
「神様お帰りあれ。」
一喝(いっかつ)すると、いつの間にか普通の人に(もど)ったという。信者たちは、御嶽山に出かける前には、この滝で水垢離をとり、無事に帰るとまた水垢離をとったという。