八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
庭野地区
 
   (なみ)  (きり)  ()  (どう)  

 庭野の龍岳院(りゅうがくいん)の山門の前に車をとめて西に向かう山道をたどっていくと,急な坂に出る。道の両わきには無数の紙の小旗(こばた)が立っている。酉年(とりどし)の男,辰年(たつどし)の男,亥年(いどし)の男などという文字が見える。沢をのぼりつめたところに,「金峯山(きんぷせん)修験(しゅげん)本宗(ほんしゅう)波切不動教会」の表札(ひょうさつ)をかかげたお堂がある。お堂の前に,かけ()から落ちる清水がある。ここで滝にうたれて(がん)をかける人があるという。
 さらに山道をのぼっていくと,お不動様の(おく)の院といわれる岳岩(がくいわ)に出る。
 昔,ここに(りゅう)が住んでいた。龍の出たり入ったりする岩穴がある。生卵やお酒をあげて,願いごとがかないますようにお参りする人があとを()たない。地元の人よりも豊橋のような,遠くからお参りに来る人が大勢いる。
 毎月17日が,お不動様のお祭りの日である。お堂にこもってお参りする人もいて,にぎやかなことである。まあ,縁談(えんだん)でも,病気でも,願いがかなうとあれば遠くからでもやってくるのであろう。
 今,堂守をしている渡辺のばあさんも,おじいさんの目が不自由だった時に連れ立ってお参りに来ていたところ,治ったというので,いっぺんにここの信者になったという。
 また,最初の堂守をしていた人は,海軍に行った人の奥さんで,主人が亡くなった時,夢枕(ゆめまくら)に立って,ここの堂守をするようにお告げがあったという話が残っている。