八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
庭野地区
 
   (ぎょう)   (じゃ)   (さま)  

 (うで)こき山の頂上(ちょうじょう)に、立派(りっぱ)な行者様の石像(せきぞう)が、石組みに囲まれた中にあります。大きな石像ですから、ここまで上げるのには大変な苦労があっただろうと思います。ずきんのような(かんむり)をかぶり、(かみ)をたれ、ひげを長く()ばし、高い下駄(げた)をはいてこしかけています。どこの行者様も、たいていこういう姿をしています。
 大昔は、山を神様としてあがめ、尊敬(そんけい)していました。そして、山から山へ移り歩いて、苦行(くぎょう)して心身をきたえることで神様に近づくことができると考えました。こういう人たちを、行者、修験者(しゅげんじゃ)山伏(やまぶし)といって、大和(やまと)熊野(くまの)の山を中心にして、全国をまわっていました。この地方にも、信仰(しんこう)したり、修行(しゅぎょう)したり、また、行者を(うやま)う人たちが多くいました。この信仰を修験道(しゅげんどう)といって、修験者の中には、祈祷(きとう)をして神様のお()げをいう人もいました。
 (えん)の行者といわれる人は、今から1300年近くも昔の人で、本名を役小角(えんのおづの)といって、大和から全国にかけて、この道をひろめた人だといわれています。鳳来寺山をひらいた利修(りしゅう)仙人(せんにん)もこのころの人で、二人は兄弟だという伝説もあるくらいですから、(えん)の行者もこの地方に来たことだろうと思います。腕こき山の行者も役の行者の姿だったことでしょう。