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むかし、竹合というところに、代官屋敷がありました。代官といえばこのあたりの人にとっては殿様ですが、だれ一人お代官の顔をみた人はありませんし、まして、このお屋敷に入れてもらった人はありませんでした。外から眺めるだけでは、大きな屋敷はどのくらいあるのか見当もつかないほどでした。大きな家が、いく棟もかさなってみえました。ずいぶん財産やたからものがあるだろうといううわさがたっていました。そんなうわさは遠くの地方まで広がっていきました。
ある時、どこから来たのかわかりませんが5人の盗賊がうわさを聞いてやってきました。みんなただの盗賊とも思えないような、からだは大きく、力も強そうで、そのうえ身なりもなかなかでした。けれども、中の様子はわかりません。大きな屋敷のあちらこちらをさがしましたが、何一つ、たからものと思われるようなものは見あたりません。とうとう、いちばん奥まった代官のすまいまでやってきました。代官は、一人で寝てはいましたが、盗賊の動きはさっきから知っていました。五人は、互いの力をたのんで、戸をこじあけて入ってきました。そこへぱっとはねおきた代官は、驚くほどの大男で、盗賊のおよぶところではありません。五人はたちまちとらえられ、首をはねられてしまいました。
代官は、五人の首を大きな一つの櫃に入れて、牛ほどもある大石の下に埋めました。こんな大きな石のふたをされてしまっては、盗賊もたたりようがありません。それでも、代官がまつったのか、誰がはじめたのか、ほこらをおまつりする人がありました
それから、このあたりを五人びつと呼ぶようになったといいます。 |
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