八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
中宇利地区
 
   () () の (いな) ()  

 曽根の稲荷さまは,大変なくなった物に霊験(れいけん)あらたかな神様だという評判(ひょうばん)です。
 ある人が自動車のキーをなくして,いくらさがしても見つからないので,お(がん)をかけたら,翌朝(よくあさ)になってひょっこり出てきたという話です。
 大正のころ,豊橋へ出て石けん屋で成功した高柳(たかやなぎ)さんという人が,まだこちらに住んでいたころ,ある晩(おそ)くここを通りかかるとあかりがともっていました。近づいてみますと,乞食(こじき)坊主(ぼうず)がいっしょうけんめいお(きょう)をあげていました。そこで,商売のことを(たず)ねると,「きっと繁盛(はんじょう)するよ。」ということでした。それから豊橋へ出たわけですが,お()げの通りになりましたので,大変ありがたく思ってさっそく9尺2間の拝殿(はいでん)を造ってあげました。
 伊勢(いせ)(わん)台風(たいふう)の時には,ふしぎなことがありました。この拝殿のうしろにあった(ほこら)が,拝殿を回って,正面の向拝(こうはい)の柱をへし折って,前の庭にどこもこわれずにひっくりかえっていたということです。