八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
中宇利地区
 
   が ら ん お さ め  

 白山神社の(うら)の松林の中に,(つくえ)の広さほどに大小の石で敷石(しきいし)がしてあり,その中央に(あな)があいている。ふだんは平らな石でふたがしてある。あたり一坪(ひとつぼ)くらいの四隅(よすみ)には,竹をたてるための石が数個ずつ置かれている。
 (きゅう)正月の一日,祢宜(ねぎ)さまが「がらんおさめ」という行事をする。四隅にたてた竹にしめなわをはり,石のふたをとって,(かや)のひとにぎりを白山龍王(はくさんりゅうおう)(いん)をおした半紙にくるんで,(あさ)でしばったものを穴にさし,この上に甘酒(あまざけ)のもとを少しうすめたものをそそぎ,また石のふたをして終わる。
 これが「がらんおさめ」の行事であるが,七日になると一日にしこんでおいた甘酒を()かしてみんなにふるまう。
 一方,ごおうというのを用意する。これは新芽(しんめ)のついた川やなぎを,六寸五分に切り,頭を四つに割り,四角に切った半紙を三角に折って,この先端(せんたん)にさし,二本ずつ(たば)ねて半紙でつつんだものである。
 できたごおうを七日の日に,氏子(うじこ)一軒(いっけん)に一つずつ配る。家ではこれを苗代田(なわしろだ)水口(みずくち)に立てておく。
 一日(ついたち)の行事は,収穫(しゅうかく)豊凶(ほうきょう)(うらな)う,おためしであろうといい,七日のごおうは病虫害よけの行事であろうといわれている。