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黒田に庄さという人が住んでいました。
ある日,庄さが,用事が終わって家に帰る途中,黒田の本光庵という所を通りかかりました。すると,庵の庭で狸の子どもが数匹遊んでいるのが目にとまりました。庄さは,木のかげに身をよせて,しばらく様子をみておりました。あまりおもしろそうでしたので,庄さはいたずらをしてやろうと思いました。そこで急に大声をあげてとび出していきました。狸の子どもたちは,びっくりして木の穴にわれ先にと逃げこんでしまいました。庄さは,遅くなったことに気がついて急いで家に帰りました。
その夜,庄さがぐっすり眠りについていますと,体を押さえつけるものがあります。庄さはだんだん苦しくなって目をあけました。あたりには何もおりません。また眠り出しました。しばらくするとまた,押さえられて息苦しくなってきました。起きてみると何もありません。こんなことが二・三度続きました。庄さはふしぎに思って,外に出てみました。ふと屋根の上を見ると,黒い,丸いものがもそもそと動いています。よく見ますと,それはまぎれもなく狸です。きっと昼間のいたずらのしかえしにやって来たにちがいありません。庄さは大声を出して追っ払いました。それから後は何もおこらなくなりました。もう決して狸はいじめないようにしようと思いました。 |
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