八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
黒田地区
 
   (しょう) さ と (たぬき)  

  黒田に庄さという人が住んでいました。
 ある日,庄さが,用事が終わって家に帰る途中(とちゅう),黒田の本光庵(ほんこうあん)という所を通りかかりました。すると,庵の庭で(たぬき)の子どもが数匹(すうひき)遊んでいるのが目にとまりました。庄さは,木のかげに身をよせて,しばらく様子をみておりました。あまりおもしろそうでしたので,庄さはいたずらをしてやろうと思いました。そこで急に大声をあげてとび出していきました。狸の子どもたちは,びっくりして木の(あな)
にわれ先にと逃げこんでしまいました。庄さは,(おそ)くなったことに気がついて急いで家に帰りました。
 
その夜,庄さがぐっすり(ねむ)りについていますと,体を()さえつけるものがあります。庄さはだんだん苦しくなって目をあけました。あたりには何もおりません。また眠り出しました。しばらくするとまた,押さえられて息苦しくなってきました。起きてみると何もありません。こんなことが二・三度続きました。庄さはふしぎに思って,外に出てみました。ふと屋根の上を見ると,黒い,丸いものがもそもそと動いています。よく見ますと,それはまぎれもなく狸です。きっと昼間のいたずらのしかえしにやって来たにちがいありません。庄さは大声を出して()(ぱら)いました。それから後は何もおこらなくなりました。もう決して狸はいじめないようにしようと思いました。