八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
黒田地区
 
   お (まっ) (しゃ) (めぐ) り  

 正月15日は,上元(じょうげん)の日である。この日,村人はこぞってお末社巡りに出かける。午前8時に仁王(におう)(ぼこら)に集まる。そこは,昔は村の入口で,悪鬼災害(あっきさいがい)を防ぐため仁王を(おさ)めた祠のある所である。そこを出発点として,お末社巡りが始まるのである。
 山の地形を,全国の有名な社寺になぞらえて造ったお社にお参りするのである。まず,象頭山(ぞうずさん)金比羅様(こんぴらさま)にお参りする。そこから山を下って,もとの本光庵(ほんこうあん)の一帯へ出る。そこには,神社の本地仏(ほんじぶつ)阿弥陀如来(あみだにょらい)が安置されている。となりには,方広寺(ほうこうじ)から迎えた半僧坊(はんそうぼう)さま,庚申塔(こうしんとう)もある。そのそばにあるのが楠木(くすのき)神社(正成公(まさしげこう)とは関係ない)である。明治34年まで,目通り5(じょう)(しゃく)(16mくらい),という大木があって,それを伐ったあとに神殿(しんでん)創建(そうけん)したもので,それは明治35年のことだそうである。
 黒田で最初に開けた神畑(かみはた)の地を通って,富士(ふじ)浅間(せんげん)に出る。といっても海抜(かいばつ)200mくらいの山である。浅間峠尾根伝いに行くと,秋葉(あきば)さまへ出る。防火の神である。少し下ると,山上さまへ出る。役行者(えんのぎょうじゃ)尊像(そんぞう)洞穴(ほらあな)の中にある。灯篭(とうろう)には,宝暦(ほうれき)8年とあるから今から220余年(よねん)も以前のものである。山を下って不動明王にお参りする。また山を下り,一つの谷を越すと,(しい)の大木がある。それがご神体(しんたい)代わりと思われる山の神さまである。そこからお宮へ向かって歩く。途中に道祖神(どうそしん)があったが,今は東の方へ移転されている。
 約2時間歩いて一同お宮へ帰り,神事(しんじ)があって,みんなで本社拝礼(はいれい)をするという行事である。
(黒田諏訪(すわ)神社誌より)