八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
黒田地区
 
   (あま) () い の 面  

 黒田の諏訪(すわ)神社には、天狗(てんぐ)面、(おに)面、(りゅう)面などの面があります。これらの面の中で、龍面は、雨乞いの面として、大正のはじめごろまでは、よく使われていました。
 お百姓(ひゃくしょう)にとって、水はいのちです。夏の日照りには大変苦しみ、神様に雨を降らせてくれるように(いの)ったものです。
 そんなときには、村の人たちがお宮に集まって、雨ごいのお祈りをしました。
いくらお祈りをしても雨が降らないときは、最後の手として、村中総出(そうで)でお面を滝の入山の不動さまへはこび、滝の水でお面を洗って雨乞いのお祈りをします。
 こうすると、お祈りの式も終わらぬうちに、まっ黒な雲がわきあがって、滝のような大雨になりました。
 お祈りが通じて、雨が降り出したことはうれしいことですが、あまりの大雨で、帰り道は前を向いてはとても歩けません。そこで村人たちは後向きになって、坂道をおりてきたということです。今でも「あとずり坂」という地名が残っています。