八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
一鍬田地区
 
   雨降り正月と雨ごい  

 お正月には,どこの家でも仕事を休んで遊んだり,家族で何かを楽しんだりするものだ。
 ずうっと日照りが続いて,やっとかめで雨が降ったりすると,仕事ができないばかりが,うれしいものだ。そんな時はお正月のような気分になるものだ。それでみんながいっしょに雨降り正月になるように,知らせて歩く,ありきさん(歩きさん)があった。ふだんは一鍬田のきっぷ配りや村役場からのいろいろな通知を持ってくる人で,配達屋さんのようなものだ。
 そして,このありきさんが,氏神(うじがみ)様の太鼓(たいこ)をつかって村中たたいて回るんだ。
「今日は雨降り正月がだから,仕事を休んでもいいですよ。」
 という合図なんだよ。それを聞いて,みんなは「今日一日遊べるなあ。」などと思うわけだ。
 この雨降り正月は,年に一,二度くらいはやってきたもんだな。しかし,雨降り正月が来んで,ずうっと日照りが続くときがある。村中からからに(かわ)いちまって,作物が(かれ)れてしまうんだよ。それがひどくなると,村中で雨ごいをするんだなあ。
 雨ごいは,村の人たちが,まず氏神様にお参りして,それから吉祥山(きちじょうさん)のてっぺんにおまつりしてある吉祥尼天(きっしょうにてん)さまと,かいくら(ぶち)にまつってある弁天(べんてん)さまに雨ごいに行ったんだよ。みんな行列して(おが)んだよ。雨が降れば,またみんなでお札参りに行ったんだよ。