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むかし、屋敷に滝さまという人がありました。滝さまは、あるとき、西国へ引っ越していくことになりました。滝さまは、屋敷のお庚申さまがどんなことでも聞きとどけてくれるので、ひとりじめしようとして、こっそり盗みだして持っていってしまいました。
お庚申さまがいなくなったのを知った、屋敷の人々はびっくりしました。そして、がっかりしてしまいました。でも、どうすることもできません。お庚申さまの日がきても、おまつりすることもできません。みんなは、さびしい毎日を送っていました。
ところが、それからの滝さまは不幸つづきでした。お嫁さんは病気で死んでしまうし、かわいい子どもたちも、つぎつぎと病気になって死んでしまいました。とうとう滝さまは、ひとりぼっちになってしまったのです。そのとき滝さまは、はたと気がつきました。「これは、てっきりお庚申さまのたたりじゃ。屋敷の人にも申しわけないことをしてしまった。」と。
滝さまは、急いでお庚申さまを背負って屋敷へ帰り、1けん1けんあやまってまわりました。そして、ふたたびどこかへ旅立ってしまいました。
今でも、屋敷の人たちは毎年旧暦12月25日にお祭りをしています。 |
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