八名地区に伝わる昔話です。あなたの地元にも今まで知らなかった昔話が伝えられてきたことが分かりますよ。
   
 八名の昔話
   
庭野地区
 
  () (しき) の お (こう) (しん) さ ま  

 むかし、屋敷に(たき)さまという人がありました。滝さまは、あるとき、西国(さいごく)へ引っ越していくことになりました。滝さまは、屋敷のお庚申さまがどんなことでも聞きとどけてくれるので、ひとりじめしようとして、こっそり盗みだして持っていってしまいました。
 お庚申さまがいなくなったのを知った、屋敷の人々はびっくりしました。そして、がっかりしてしまいました。でも、どうすることもできません。お庚申さまの日がきても、おまつりすることもできません。みんなは、さびしい毎日を送っていました。

 ところが、それからの滝さまは不幸つづきでした。お(よめ)さんは病気で死んでしまうし、かわいい子どもたちも、つぎつぎと病気になって死んでしまいました。とうとう滝さまは、ひとりぼっちになってしまったのです。そのとき滝さまは、はたと気がつきました。「これは、てっきりお庚申さまのたたりじゃ。屋敷の人にも申しわけないことをしてしまった。」と。

 滝さまは、急いでお庚申さまを背負って屋敷へ帰り、1けん1けんあやまってまわりました。そして、ふたたびどこかへ旅立ってしまいました。

 今でも、屋敷の人たちは毎年旧暦(きゅうれき)12月25日にお祭りをしています。